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昨年は春先の気温が高く、各果樹品目の生育が前進していた中、4月の寒の戻りにより甚大な凍霜害が発生しました。
本年も暖冬傾向で推移しており、関東甲信地方の早期天候情報によりますと、4月4日頃からかなりの高温が見込まれるため、農作物の生育が更に進み、凍霜害の発生リスクが高まることが懸念されます。
被害を軽減するためには防霜ファンの点検等、凍霜害対策を早期から行うことが重要です。
農家の方々におかれましては、最新の気象情報に十分留意していただくとともに、下記を参考に農作物等の適切な管理をお願いします。
※対策にあたっては、安全の確保を最優先し、危険な場所・時間帯を避けて実施してください。
低温・凍霜害に対する農作物等の技術対策
水稲(育苗)
- 浸種初期を低水温(3℃から5℃)にした場合、発芽勢が低下し、発芽の遅れや不揃いとなることがあるので、浸種温度は10℃から15℃を目安に行う。特に浸種開始24時間は10℃から15℃を維持するように努める。
- 育苗期に寒暖差が大きいと出芽が不揃いとなるほか、ムレ苗等の障害が発生しやすい。保温シート等により床内温度の低下を防ぐとともに、日中の換気に留意して適温管理を徹底する。
- 特に降霜日は晴天となることが多く、早朝に低温であっても日中は施設内や被覆資材下の温度が急上昇しやすいので、換気により苗の焼けやムレを防止する。(アルミ蒸着シートで被覆している場合は換気不要)
果樹
- 防霜ファンを設置してある園では、動作を確認した後、稼動状態とする。
- 防霜施設のない園では、燃焼法を中心として対策を行う。
- 温度低下が著しい場合には、防霜ファン設置園においても燃焼法を実施する。なお、防霜ファンと燃焼法を併用する場合でも10a当たりの火点設置数は通常の燃焼法の場合と同じ数とし、風上側となる防霜ファン側へやや密に配置する。
- 草生栽培園では、こまめに草刈りを行い、草丈を短くしておく。
- 敷きわら等のマルチは果樹園内の気温を下げるため、凍霜害の危険がなくなるまで実施しない。
- 土壌が乾燥状態にあると地温が下がりやすいので、できるだけ午前中にかん水を行って土壌湿度を高めておく。
- 人工受粉について
- 受粉樹の花蕾採取に際しては、花器の形態を良く観察し、開葯直前の充実した葯を有する花蕾を採取する。
- 受粉前に必ず花粉発芽率調査を行い、発芽率が30%以下の場合は代わりの花粉を確保する。
- 日本なしでは、受粉後3時間の温度が15℃以上となるような条件で人工受粉する。受粉後3時間以内に低温になると結実率が低下する。
- 人工受粉後に低温が続いた場合は、気温上昇後に再度人工受粉を行う。
りんご(ふじ) | 発芽期 | 展葉初期 | 花蕾露出期 | 花蕾着色期 | 開花始期から満開期 | 落花期 |
---|---|---|---|---|---|---|
-2.1 | -2.1 | -2.1 | -2.0 | -1.5 | -1.7 | |
なし(幸水) | 発芽期 | 花蕾露出始期 | 花蕾露出期 | 花弁白色期から開花直前 | 満開期 | 幼果期 |
-3.6 | -2.9 | -2.5 | -1.8 | -1.3 | -1.3 | |
もも(あかつき) | 花蕾赤色期 | 花蕾露出始期 | 花蕾露出期 | 満開期 | 落花期 | 幼果期 |
-2.6 | -2.5 | -2.5 | -2.5 | -2.1 | -2.1 | |
ぶどう(巨峰) | 発芽期 | 3葉期 | 4葉期から6葉期 | - | - | - |
-4.6 | -2.0 | -1.8 | - | - | - |
種類 | 生育段階 | ||
---|---|---|---|
色づいたつぼみ | 開花中 | 幼果 | |
おうとう | -2.2 | -2.2 | -1.1 |
西洋なし | -3.9 | -2.2 | -1.1 |
うめ | -3.9 | -2.2 | -0.5 |
あんず | -3.9 | -2.7 | -1.1 |
すもも | -5.0 | -2.7 | -1.1 |
日本すもも | -3.3 | -2.7 | -1.1 |
ぶどう | -1.1 | -0.5 | -1.1 |
くるみ | -1.1 | -1.1 | -1.1 |
野菜
- 苗床の管理
- 育苗中の「ずらし」や定植数日前から順化を行い、健苗育成に努める。
- はくさい、ブロッコリー、カリフラワー、セルリー等の低温感応で花芽分化する品目は、それぞれ最低夜温を確保できるよう努める。
- 暖房設備がない施設では、夕方早めに換気口等を閉め、2重カーテン等により保温に努める。
- 降霜日は晴天となることが多く、早朝低温であっても日中は施設内や被覆資材下の温度が急上昇して高温障害が発生するおそれがあるため、適切な換気を行う。
- 定植時の管理
- 定植前に植え穴や植え床へかん水する場合は2,3日前までに行い、定植時の地温確保を図る。
- 定植予定日の翌朝に低温が予想される場合には、定植日を延期する。その際に、苗の順化期間を延長するが、老化苗にならないよう注意する。
- 定植時に苗箱やポットにかん水を行う場合、水温に注意し、根鉢を冷やさないようにする。
- 定植作業はできるだけ午前中に済ませる。可能であれば保温資材の被覆により保温に努め活着を促す。
- 葉洋菜類でセル苗の定植を行う場合、浅植えにならないように注意する。
- トンネル栽培のすいかでは、定植当日の摘心を避け、定植数日前あるいは活着後に行う。通常より定植位置をトンネル中央に寄せ、低温の影響を緩和する。
- 露地本ぽ管理
- 定植時には保温資材を活用して、活着促進を図る。
- 夜間の放射冷却が強い場合、農ポリなどのトンネル1重被覆のみでは外気温と同等か1,2℃低めとなることもあるので、可能であれば不織布や保温マット等による2重被覆とする。
- 地表面が-1℃程度の低温に対しては、べたがけ資材の被覆が有効である。凍霜害に遭いやすい品目へは緊急対策として利用する。ただし、作物がべたがけ資材に接している部位は、低温障害を受けやすいので留意する。
- アスパラガスで翌朝に凍霜害が予想される場合、通常の出荷規格に満たない若茎であっても前日に収穫し出荷できるか、事前に出荷団体等と検討を行う。
花き
- 露地栽培のキク、リンドウ、シンテッポウユリ等では、4月中下旬より連休前後にかけて定植期を迎える。降霜・凍害に備えて不織布や保温資材を用意し、必要に応じて被覆を行う。なお、トンネルなどを施している場合、活着後は日中徐々に外気に馴らし、閉め切りによる軟弱徒長や病害の発生を抑える。
- 植え付け前のキク、リンドウ、シンテッポウユリ等は、日中ハウスを開放し十分に直射日光を当てるほか、夜間も順次被覆資材等を開放して外気に慣らし、苗の順化に努める。降霜が予想される場合は、植え付けを数日遅らせる。
- リンドウ、シンテッポウユリの据置ほ場は、土壌の乾燥に注意し、乾燥しているほ場では通路かん水等を行い乾燥防止に努める。また、可能なほ場では農ポリ、保温資材等を用いてトンネル被覆するか、べたがけ資材で被覆し温度確保に努める。
茶
- 寒冷しゃ等を被覆し、茶樹を保護する。
- 防霜ファンが設置してある園では、防霜ファンの設定基準に従い稼働する。
【参考】長野県より示されている啓発資料
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